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俺はすぐに信義に電話した。 「ごめん、チョン高に喧嘩売っちゃった。」 「はぁ?何やってんだよ!いまどこにいんだ?」 「わかんね。バスに乗って逃げてきたから。なんか八重ってとこで降りた。どーすればいい?」 「なんでそんなとこで降りてんだよ!チョン高の地元だぞ!早くそっから離れろ!迎えに行くからバスに乗って駅まで戻れ!」 「…残念、もー見つかったみたい。前から20人ぐらい来る。とりあえずまた逃げるわ。」 そー言って反対に向かって走ろーとしたら囲まれてた。チキショー、終わった。その日俺はボコボコにされてパンツ一枚で駅の構内に転がされてるとこを迎えに来た信義に助けられた。 次の日は熱が出て体が動かねー。でも信義達は駅までチョン高狩りに行った。どーやら戦争するらしい。数ではかなわないからゲリラ戦。ちょっとずつ奴らの戦力を剥いでいくしかねー。 戦争が始まって1週間。天地はチョン高に潰された。俺達はまだ続けてたけど奴らはゴキブリ並みだ。やってもやってもきりがない。頭を潰すしかない。頭の目星はすぐついた。1コ上の崔って奴。喧嘩相手を橋から下の川に投げ込んだ事で有名だ。タイマンは負け知らずらしい。 「俺、拐ってくるわ。あんなんされたまままで黙ってらんねーし。チョン高だし、焼肉でも餌にすりゃすぐに捕まるだろ。」 「絶対タイマンなんかすんなよ。化物らしいから。」 「そこまでバカじゃねーよ。まかせとけ、心配しねーでさ。ちょちょっと終わらせてやっから。」 おっかねーけど俺がはじめた喧嘩だ。やるしかねー。
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香織んちに行くと香織は不審そーな目で俺を見る。 「…このお金何?ってかアンタ一体何やってんのよ!普通の高校生がこんな大金ポンと出せる訳ないでしょ?」 そりゃそーだ。俺が香織でも怪しいと思う。しょーがねーから昨日の話を一から全部話した。 「…このお金返してきな。こんなお金使える訳ないじゃん。ヤクザなんかからお金貰ってこのままで済むと思ってんの?アンタヤクザにでもなる気?そんなの私が喜ぶとでも思ってんの?バカにしないでよ!!私はアンタにヤクザになんかなって欲しくない!!そんな世界に入ったら抜けらんなくなっちゃうよ?」 そりゃごもっともだ。でも今更、智光先輩に金返しますなんて言えない。でも目の前の香織はもっとおっかない。しょーがないからあきらめたふりして姉ちゃんに内緒でお金を渡す事にした。少なくとも返せないからって遊びに使うには多すぎる。香織には返す事を伝えて後から姉ちゃんに渡した。50万全部。借金以外は香織のために使ってくれって伝えた。 「…本当にいいの?後からなんかあったりしない?」疑り深い姉妹だ。 「なんもないっスよ。ただ香織には内緒でお願いします。アイツ心配しちゃうから。香織の事よろしくお願いします。」 「イヤイヤ、それはこっちのセリフだから!アンタ若いのに変に大人だね。香織は幸せだわ。アンタみたいなのが彼氏で。」 俺の方が幸せだ。アイツには返せない程いろんな事教えてもらった。こんな事で返せるとは思ってないけど、これでちょっとでも香織のためになるなら体張った甲斐がある。 「そんな事ないっス。俺の方が香織にいろいろ教えてもらってますから。そんじゃ失礼します。」 香織に嘘つくのはちょっと気が引けるけど俺は香織んちを後にした。 次の日。香織は普通だった。また夜ウチに来るって言ってたから安心した。気持ちだけは嬉しかったって言ってた。 そして土曜日。今日で格さんは最後だ。いつもならバカやってる時間。俺達はクイーンにいた。 「頭として最後まで残れなくてすまん。納得いかない奴とかいるだろーけど勘弁してくれ。ケジメだけはちゃんとつける。それが俺の最後の仕事だ。」 いまからケジメをつける。いつもならみんなで殴って終わる。でも今日は俺がみんなにお願いして変えてもらった。 「…勝ち逃げは許さねーよ。しつけーけどまた俺とタイマンだ。テメーがヤクザになったらこんなバカはもー出来ない。最後に思い出作ってけよ。」 「…こりねー奴だな。いま俺の3勝1敗だったな。4勝にして最後に花添えてやる。」 10代でバカやれる時間は限られてる。俺達は精一杯背伸びしながら生きてる。仲間が死んで辛い思いしたり、喧嘩したりいろいろだ。ただ、格さんは一足早くそこから卒業していく。きつい思いしたり打ちのめされたりいろいろあるかもしれないけど、そんなのに負けない様に。俺達の代表としてがんばれる様に。俺達からの卒業式だ。 「じゃーまたな。」 走り終わった後の格さんの顔は迷いがない。 1998年。格さんは引退した。 俺が格さんに出会って7年。4回目の負けた記念だ。
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網は張ったけど今度はなかなか引っ掛からない。すぐに見つかるなら最初に見つかってるハズだ。俺と崔は地道に足で探す事にした。ミチの出身中学はわかったからその友達とかを当たってった。でも、ミチには友達って言える奴がいなかった。みんな口を揃えて「変わった奴」って事を言ってた。そして誰もミチと交流を持ってない。自宅のアパートを訪ねても郵便受けには大量の手紙と借金取りが残していった中傷のビラしかない。ここには長いこと帰ってない様だった。 「いきなり行き詰まったな。自宅に帰ってないとなると網に掛かるの待つしかない。今日は終わりだ。また明日だ。」 手がかりがないのに動くのは効率が悪い。切り上げる事にした。 「…ちょっと飲みに行かねーか?組から金もらってるし。奢るからよ。」 断りたかったけどコイツの目がそれを許してくれなかった。 「わかった。どこ行く?」 「とりあえず鳶町方面行こーぜ。」 鳶町は地元で一番の歓楽街。って言っても歌舞伎町とかに比べると全然しょぼい。でも一応キャバからオカマバー、風俗まである。そこに無口なコイツと一緒に行くのか。ある意味辛い。さっさと酔わせて切り上げるしかない。俺達はさびれた居酒屋に入った。案の定沈黙が続く。我慢できずに俺から切り出した。 「そーいやお前、俺に負けたからヤクザに入ったの?」 崔は無言で目の前のジョッキを飲み干した。 「んな訳ねーだろ。喧嘩に負けたぐらいでヤクザになんかならねーよ。俺達みたいな半端者が日本で生きてくにはよっぽど学があるかコネがなきゃ無理だ。日本人には在日呼ばわりされるし祖国からは日本に逃げた売国奴扱いされて戻っても仕事も着けずに野垂れ死ぬだけ。それなら日本で一旗あげた方がよっぽどいい。学がなきゃ腕力しかねーだろ?だから俺はヤクザになった。」 こいつはこいつなりに考えてたらしい。 「だからってヤクザはねーだろ。痛いし自由なんてないし。そんなんでよかったのか?」 「たしかにそれはあるけどいまは楽しいよ。組の人はみんな良くしてくれるし。最初からヤダヤダだ言ってもしょーがねーだろ。俺はこの世界で食ってくんだから、楽しまないとな。」 「お前、結構前向きな奴なんだな。なんか意外だったわ。」 そんなくだらない話をしながら夜は更けてく。俺達は居酒屋を出た。 「あと一軒行くぞ!金はもらってっから心配すんな!」 崔は酔っ払うといつも以上に豪快になってた。次はキャバか。そんな事考えながら歩いてると前から女の子の客引きが歩いてきた。でもどっかで見たことある顔だった。 …昼間写真でみたミチだった。カツラをかぶって化粧してるけど間違いない。幸い隣のバカは気づいてない。俺達はミチに引っ張られる様に店に入って行った。
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いつもご利用ありがとうございます。 以下の時間帯で緊急にメンテナンスを行っております。 対象 www49.atwiki.jp , www50.atwiki.jp 時間 2011年10月13日 午後00時00分頃~ 午後01時00分頃 この度は、大変ご迷惑をおかけし申し訳ございません。 その他お気づきの点などございましたらお気軽にお問い合わせください。 これからも宜しくお願い致します。
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「だいぶ派手にいじってるね。お兄さんどっから来たの?」 くそ、めんどくさい事になった。 「遠くだよ。県南の方。ちょっとツーリングで通っただけ。すぐに行くよ。」 こんなとこで喧嘩はごめんだ。あっという間に囲まれちまう。 「へー。でもおかしいな。シートの後ろのステッカーには中央海岸暴走愚連隊、日丸連合って書いてあるんだけど。これって県央の方のチームだよね?」 真也の単車は三段シートの後にステッカーが貼ってある。俺の単車で来ればよかった。ちきしょう、これ以上はごまかせない。 「いま俺の友達にもこのかっこいい単車見てもらおーと思ってさ。仲間呼んだから。…逃げんなよ。」 最悪だ。真也はまだ出てこない。ここでやるしかない。俺はポケットの中の特殊警棒を握った。 「ワリィ、便所混んでてさ~。…そいつ誰?」 真也が出てきた。男の注意も俺からそれた。今だ。俺は特殊警棒を伸ばして男の頭を叩き割った。男は鯨みたいに血を吹き出しながらうずくまる。 「ちょ、いきなり何してんだよ!」 「こいつ阿弥陀だ!!仲間呼ばれてる。行くぞ!!」 うずくまる男にダメ押しでもう一回特殊警棒をふりおろす。 「…めんどくせー事になってきたな。」 俺と真也はコンビニをあとにした。
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真也と信義は泣いてた。俺はまだ泣いちゃいけない気がして家に帰っても不思議と涙は出なかった。 まだ頭の中が整理できないでいる。 「俺のせいで死んだのかな。」 そう考えた瞬間、恐くなった。あんなに追い詰める様な事を言ったのなんでか。あいつらが死んで、自分は生きてる。そんな事が何度も何度も頭をよぎる。一人ではいたくないけど誰とも会いたくない。 俺は事故現場に戻った。 事故現場にはまだヤマトの血のあとが残ってた。 一平のいたとこにはチョークの痕。見ててたまらなくなった。一平の単車は道の端に置いてある。テールの辺りが大破してるけど、まだ単車の形は保ってる。ここに置きっぱなしにしておくのがひどく申し訳ない気持ちにさせた。 ふいにピッチがなった。 格さんからだった。 「大丈夫か。いまみんなでマックに来たんだけど、とりあえずこれるか?ってかいまどこにいんだよ。」 「…いま一平迎えにきたとこ。いまから行くよ。」 俺はそー言って単車のセルを回してみた。一平のバブはうんともすんとも言わない。キックを下ろしたらエンジンがかかった。後輪はメチャクチャだけど俺は一平の単車で走り出した。 マックに行く途中でこけた。後輪がメチャクチャだからまっすぐには走らない。痛えと思った瞬間涙がでてきた。 一平ごめん。お前の単車でこけちゃったよ。すげー痛いけど、お前らはもう痛いのも感じられないんだよな。本当にごめんな。 俺は子供みたいに泣いた。 痛くてじゃなくて悲しくて。
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風呂場に忠志を連れてくと俺はシャワーの温度を限界まで上げた。 「おい、起きろ。」 崔は忠志の顔を叩いて起こした。 「いまから残りの金の在りかとお前の女のいる場所聞くから。答えたくなったら勝手に答えてくれ。こっちも勝手にやらせてもらうから。」 俺はシャワーを捻った。熱湯を忠志の足にぶっかけた。暴れる忠志を崔は金属バットで殴り付けた。右足の膝から下がかなり無惨な姿になった。臭いもすごい。「喋りたくなった?早くしないと左足もこーなっちまうぞ。」 「わかった、喋るからもう勘弁してくれ。だから左足はやめてくれ。」 俺は手を止めた。崔が忠志の頭を湯船に沈めた。 「やめてくれじゃなくてやめてくださいだろ。言葉遣い間違えると死ぬぞ。」 多分聞こえてない。俺は崔から忠志を引き離した。 「やめろよ。殺す気か?いまコイツしか情報ないんだから殺すと残りの300万パーだぞ。少し落ち着け。ちょっと表で頭冷やしてこい。俺が聞いとくから。」 崔は渋々風呂を出ていった。 「おい、このままじゃアンタ、アイツに殺されるぞ。一応アイツは友達だ。友達が人殺しになるのなんて見たくない。さっさと金の在りかと女の居場所教えろ。そしたら俺がなんとか逃してやるから。」 さっきの崔の行動でわかった。崔は組から裏切り者の始末を命令されてる。ここにミチの母ちゃんが来たとしたらもっと最悪の結果になる。流石に人殺しなんかに立ち会いたくなかった。金さえ戻れば最悪の事態は避けられる。 「残りの金はまだあるのか?」 忠志は首を横に振った。最悪だ。今から数時間で300万も作れるわけない。 「いまからそこの窓から飛び降りて逃げろ。ここは2階だからうまくいけば逃げられる。残りの300万はなんとかして作れ。いま逃げなきゃ殺されるぞ。早く行け。」 一生懸命俺に手を合わせてた。神様じゃないんだからやめて欲しかった。忠志は窓から飛び降りた。でも残念な事に下には崔が待ってた。逃亡は失敗した。 「テメェ、何逃してんだよ!」 キレた崔が突っ掛かってきた。 「うるせぇな。このままだったらアイツの事殺しちまうだろーが。いくら知らない奴でも俺の目の前で殺されるのなんか耐えらんねーんだよ!」 崔が黙った。図星だったらしい。 「なんとか殺さないで済む方法はないのかよ?お前だって人殺しなんかしたくねーだろ?金だけ返して終わりにしよーぜ。俺も一緒に頭下げるからさ。頼むよ。」 「…わかった。でも残りの金は取り返さないとならないから女呼ぶぞ。それなら文句ないだろ?それまでコイツは人質だ。」 そー言ってガムテープで顔をぐるぐる巻きにして手を縛った。車に戻るとミチが待ってた。 「ちゃんと捕まえられたんだ。お金はあった?」 俺は答えなかった。いくら取られたとは言っても昔の男がこんな目にあわされてるのに冷静でいられるコイツが気持ち悪かった。 「夜が明けるまでどっかで待つぞ。女捕まえて金回収してこの話は終わりだ。」 そー信じたかった。うっかり迷いこんじまった長い夜をさっさと終らせなきゃ。こっちがおかしくなりそーだ。
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追悼集会当日。一平の単車は無事走れる様になってた。格さんの事とかちょっと気になる事はあるけど今日は祭りだ。一平達を送り出すための。神輿は大きい程いい。いろんなチームに声をかけた甲斐もあって当日は単車だけで400台集まる程の大きな集会になった。全盛期の頃ならともかく、いまの時代にこれだけ大きな追悼を開けるとこはあまりない。誰が呼んだかわからんけど阿弥陀の連中も来てる。普通なら喧嘩になるけど今日だけはシカトだ。一平達の追悼を汚す訳にはいかない。 「じゃーそろそろ集まったみたいだから頭にはルートの説明するから集まってくれ。」 今日の集合場所は浜。クイーンじゃこれだけの人数は入りきれない。 「今日は浜出発して市内を回って最後に事故現場で黙祷してまた浜に戻ってくるから。ケツモチはうちでやるから心配すんな。万が一他のチームとかち合ってもこっちからは手を出すな。今日はウチの仕切りだから勝手な事は謹んでくれ。それじゃ、ナイトが来たら出発だ。」 格さんが仕切る。これだけ大所帯だとまとめるだけで苦労する。でもそれよりも俺はこの前一輝の言ってた事の方が気になってた。 「なんだ元気ねーな。今日は祭りだぜ。もっと胸はれ。シャンとしろよ!」 格さんが笑いながら言う。 俺が聞こうとした瞬間ちょっと遠くから単車の音が聞こえた。ナイトが来た。 「今日は奴らの分まで楽しんでやれ!そろそろ出るぞ。」 格さんはそー言うと単車のエンジンをかけた。 俺は一平の単車のシートを外して腕章を取る。ヤマトが着けてた物だ。血で黒く変色してる。シートの下には二人の写真。一瞬涙が出そうになったけど今日は泣けない。二人をちゃんと送り出してやらなきゃならないからな。 「…格さん。全部終わったら話たい事があんだけど。」 「…わかった。後で聞くよ。」 一平の単車は盛大にいい音を出して走り出した。
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時計を見るともー10時過ぎてる。ちょっとぐらいは気にしない。ふねに行くと格さんがすでに来てた。 「おせーよ。わりーけど先にはじめてるぞ。今日はお前のおごりだろ?」 「ふざけろ!割りだよ割り。とりあえず生中!」 注文して席に着く。 「ガキが生意気に生なんて飲みやがって。コーラとか可愛げのあるもん頼め!」 マスターに嫌味を言われながらとりあえず乾杯した。 「もー一平達いなくなって2ヶ月か。早えーな。焼鳥も適当につまめよ。あんまうまくねーけど。」 格さんはマスターに嫌味を返しながら焼鳥を進める。ちなみにマスターは族じゃない友達の父ちゃん。 「アイツらにはいろいろ迷惑かけられたけどやっぱいなくなると寂しいな。今日は奴らに乾杯だな。」 俺達は一平達の事を死んだとは言わない。なんかヒョッコリ帰ってきそーな気がしていまだに“死んだ”って言葉は使えずにいた。 「そー言やお前と二人きりで飲むのってはじめてか?」 「ふざけんな、中坊のころてめーにぶっ飛ばされたあと一緒にてめーんちで飲んだだろ!何、勝手に忘れてんだ!あんときは口の中が修羅場んなってて大変だったんだかんな!」 「そーだっけ?わりぃわりぃ!そー言やそんな事もあったな。」 俺は今までコイツに1勝2敗で負け越してる。 「そーだよ。それにみんなで飲むと最後は俺とお前二人だけになっちまうだろ。みんな先に潰れちまってよ。」 「真也なんか勢いだけで飲むかんな。ペース守れねーから一番先に潰れちまうから。前にチン毛燃やした事もあったじゃん。」 「あん時はヒデーと思ったけど笑ったな!真也、ちょっと泣いてたもん!」 「お前も昔酔っ払って買い出し行って用水路に頭から突っ込んだ事あったじゃん。帰ってきたら臭くてビビったもん!」 「格さんだって酔っ払って俺んちで全裸になった事あったな。ウチのばーちゃんにフルヌード見せたじゃん。」 「ありゃー目の保養だろ!潤んだ瞳で俺の事見てたもん!」 「身内ネタは勘弁しろよ!」 俺達はくだらない事を話してた。お互いその話題を避ける様に。でもこのままじゃダメだ。俺は自分の気持ちに踏ん切りをつけるために聞いた。 「今日は話したい事あるって言ったじゃん。一輝とかから聞いたんだけど、格さんヤクザになんのか?」 格さんの顔色が変わった。「ふーん。そんな事言ってる奴がいるんだ。」 答えになってない。 「はぐらかさないでちゃんと答えろよ。なるのかならねーのかどっちだ?」 「…いま誘われてる。正直、俺みたいなのはそっちの世界でしか生きられねーんじゃねーかなって思って。学があるわけじゃねーし、とりわけコネがあるわけでもねー。俺みたいなのが生きてくにはマトモな世界じゃ苦しいんだよ。」 格さんは苦笑いしながら言った。 「てめーふざけんなよ!ヤクザになんてならねーって言ってたじゃねーか!!真っ当な人生歩んでくんじゃなかったのかよ!ヤクザなんかになったら畳の上じゃ死ねねーって。俺に教えてくれたの格さんだよな?俺は絶対認めねーから。とりあえず表出ろよ!」 格さんはうなずきながら立ち上がる。会計は俺が払った。 「タイマン張れよ。俺が勝ったらヤクザにはならねー。負けたら好きにしろ。俺に勝てねー様じゃヤクザなんか勤まらねーから。神社行くぞ。」 格さんは黙ってついてきた。 「懐かしいな。お前が俺に一番最初に負けたのこの神社だったよな。」 「ちゃんと覚えてんじゃねーか!でもここでお前は負けるぜ。いつもみてーに手加減しねーから。」 「無駄口たたいでねーでさっさとかかってこい。時間あんまねーんだからよ。」 ふざけやがって。今日ばかりは絶対に負ける訳にはいかない。 「…約束守れよな。」 そー言って俺は格さんを殴った。
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飯田さんちはジローが住んでる町にある。ジローは前は別のとこに住んでて、高校に入るのと同時にこの町に引っ越してきた。俺がジロー乗っけて真也が幸雄乗っけてった。途中スーパーで見舞の品を買って行こうということになり、みんな思い思いの物を買った。ジローは無難にカステラ。真也は誰がこんなに食うんだって思うぐらいのバナナ。飯田さんはゴリラか。俺はいつもガム食ってるって理由からガムを3000円分。メジャーリーガーだってこんなには食わない。幸雄はよっぽど飯田さんが嫌いなのか、塩と増えるわかめ。こいつは人としてどーかと思う。 とりあえず飯田さんちの前に着くと、俺達の単車に負けず劣らずの下品な単車が一台止まってる。ジローがちょっとビビりながらインターホンを押した。 中からは紫色の頭で豹が書いてあるトレーナーを着た肉食獣が出てきた。どーやらお母さんの様だ。 肉食獣の間合いにいたジローは腰を抜かした。ジロー曰く、あんな下品なおばさんは見たことないって言ってた。 肉食獣は、 「あんたらウチの豊に喧嘩売りにきたんか!!喧嘩するなら表に連れて行け、家の中でやられたら迷惑だっ!!」 と素敵なお言葉。 どんな修羅場をくぐれば初対面の高校生にこんな事が言えるのか、ちょっと気になったが、とりあえず敵じゃなくて見舞に来た事と、貢ぎ物を持ってきた事を伝えるとすんなり入れてくれた。肉食獣が一番喜んだのは、幸雄が買った塩と増えるわかめくんだった。